ガラスで未来を創造する。

中島硝子工業株式会社

ガラスの使用温度

お客さまからのご相談の中には、しばしば「○○℃になる装置の覗き窓に使えるガラスを教えて下さい。」という相談を受けることがあります。そんなわけで、今回はガラスの使用温度に関してご説明致します。


•単板ガラス(ソーダライムガラス)

単板ガラス

ほぼ均一な無機素材であるガラスは、本来400℃~500℃の高温下でも燃えたりとけたりすることなく耐えることが出来ます。しかしガラスに部分的な温度差が生じると僅か数十℃の温度差(熱衝撃)で「熱割れ」が起きて割れてしまいます。例え温度変化が緩やかな装置でも、ガラスの庫内側と庫外側の温度差やガラスと固定部材の放熱性の違いにより生じる周辺部と中心部の温度の違い、装置内部空気に生じる温度ムラ等の影響によってガラスに部分的な温度差が生じ、割れてしまう恐れがあります。こういった熱割れに対して対策のつもりで厚いガラスを用いると、よりガラスに温度差が生じやすくなり、割れやすくなってしまいます。また破損以外にも高温環境や高湿度の環境下ではガラスのやけを生じやすくなる為、徐々に透視性が悪化する恐れもあります。
 低温環境下ではガラスのやけの問題は生じませんが温度差(熱衝撃)による熱割れは高温環境と同じく発生します。ガラス全体を加熱・冷却した場合、ガラスの表面や周囲から中心部へと順番に温度変化が生じるので、ガラスを温める過程(中心部が低温、表面が高温状態→表面に圧縮応力が生じる)よりガラスを冷却する過程(中心部が高温、表面が低温→表面に引張応力が生じる)の方が割れやすくなります。従いまして普通のガラスは極端な低温、高温環境下での使用にはあまり適していません。


•強化ガラス

強度を高めたガラス

強化ガラスは熱処理により耐風圧強度を高めたガラスですが、その強さは熱割れに対しても有効に働きます。しかしその有効性はあくまで建築用途の範囲で100℃を超えるような大きな温度差(熱衝撃)が生じると割れる恐れがあります。また、強化処理ではやけの問題は軽減することが出来ません。さらに300℃以上の高温に曝されると強化処理によりガラスに加えた強化応力が徐々に低下し、強化処理の効果が低下する恐れがあります。
 低温環境下での問題点は普通のガラス同様温度差(熱衝撃)による熱割れになります。従いまして強化ガラスは普通のガラスよりは熱割れを起こしにくい分低温、高温環境への耐久性が若干高くなりますが、上記のように限度があるので注意が必要です。


•合わせガラス

2枚のガラスを貼り合わせた構造

合わせガラスは2枚のガラスを特殊中間膜で貼り合わせたガラスで、万一割れた際にガラスの破片が飛び散り難く、2次災害を軽減できるガラスです。ガラス温度が70℃以上になると中間膜に泡を生じる恐れがあるため、高温環境での使用は適しません。
 低温環境下では中間膜の種類にもよりますが温度の低下とともに中間膜の柔軟性が低下し、合わせガラス本来の性能が発揮出来ない恐れがあります。合わせガラスのJIS試験で評価される飛散、貫通性能は常温(23℃)環境下におけるものですが、品質管理の一環として低温環境下での接着性評価も行っています。


•複層ガラス

2枚のガラスを貼り合わせた構造

複層ガラスは2枚のガラスの間に空間を設けて周辺部で固定、密封した断熱性の高いガラスです。70℃を超える環境で使用すると周囲の密封に使われている封着材の劣化が促進され、固定、密封状態の悪化から断熱性能の低下や断熱層に内部結露が発生する恐れがあります。また、複層ガラス内部に密閉された空気が温められて膨張することによって、ガラスが撓んで破損する恐れもあり、高温になる装置等への使用は適しません。
 低温環境下では複層ガラス内に密閉された空気が収縮し、ガラスが撓んで破損したり、空気層周囲の封着材が破損したり、複層ガラスの内部結露が発生する恐れがあります。複層ガラスのJIS試験では合計42日間の耐湿耐光試験と72サイクルの冷熱繰返し試験の後に露点(複層ガラス内面に結露を生じる最高温度)が-30℃以下であることが要求されます。※


以上のように高温が予想される箇所への建築用ガラス(ソーダライムガラスとその加工品)の使用はかなり制限されます。そういった用途には膨張係数が小さく(熱割れが起きにくい)、化学的安定性の高い(やけが起きにくい)ホウケイ酸ガラスや石英ガラスの利用もご検討下さい。また圧力容器のぞき窓の場合、ソーダライムガラス(強化ガラス)は常用温度80℃以下、かつ内容物が腐食性でない場合にしか使用できません(JIS B8286参照)。割れ交換などで当初と異なるガラスに交換すると規格・検査の不適合を招く恐れがあり、作業者の安全にも関わりますので装置メーカーとよくご相談の上お選び下さい。

  ※ JIS R3209の露点試験は大きさ:350×500mm、構成:ガラス5mm+断熱層6mm+ガラス5mmの複層ガラスで実施されます。サイズや構成が変わると試験によって各部材が受ける影響が変わる為、全ての複層ガラスがこのテストをクリア出来るわけではありません。