ガラスで未来を創造する。

中島硝子工業株式会社

ガラス(窓)と防音1 - 基礎知識

ガラス(窓)の防音性能を説明するにあたって、まず基本となる知識と用語をご説明致します。単板ガラス・合わせガラス・複層ガラスの特徴を知りたい場合は「ガラス(窓)と防音2」の記事を参照してください。


・音についての基礎知識

ガラスにあたった音は反射、透過、吸収にわかれます

空気中を伝わる音とは局所的な空気の圧力変動のことで、圧力の変化量が音の大きさ(音圧)、1秒間に圧力が上昇下降する回数が音の高さ(周波数)になります。ガラスに入射した音は光と同様に反射、吸収、透過の3つに分かれます。ガラスのように硬く重い板材料の場合入射した音のエネルギーはほとんど反射音、もしくは透過音になり、吸収効果はほとんどありません。このため室内で楽器演奏を行う為に遮音性能の高いガラスを用いると屋外への音漏れ(透過音)は小さくなりますが、その分室内で聞く音(反射音)は大きく感じるようになります。


・質量則

上記のように空気中を伝わる音は空気の圧力変動なので、ガラスのように通気性のない遮蔽物を超えて音が直接伝わることはありません。音がガラスを超えて伝わるのは、音によって生じるガラス両面の圧力差がガラスを振動させ、ガラスが音源と反対側の空気を振動させることで音が透過します。この現象を数式で表すと遮音性能は周波数と面密度(面積当たりの質量)の対数に比例する(音が垂直に入射する場合ガラスの重さ又は周波数が2倍になると遮音性能が6dB上昇する)という関係性(質量則)が得られます。この数式から、大まかな遮音性能を求めることが出来ます。※1

遮音性能は周波数と面密度の対数に比例します    質量則には直入射、乱入射、音場質量則があり、音場質量則が実測値に近い

実際にガラスの厚みを倍にした場合の遮音性能の向上は乱入射の質量則に近い約5dB程度であり、倍の遮音性能は得られません。また、6mmガラスについて質量則で計算した遮音性能と実際の測定結果を比較したグラフを見ると、測定値は質量則と異なり2000Hz前後で遮音性能が低下しています。これはコインシデンス効果という現象によるものです。


・コインシデンス効果

斜めに入射した音波と平面の屈曲振動の波長が一致することで遮音性能が低下します

質量則は遮蔽物が一様なピストン運動をすると仮定された式ですが、ガラスやコンクリート壁のような硬くて均一な平面構造体には屈曲振動も生じます。平面の屈曲振動の伝搬速度と平面に対して斜めに入射する音波の波長が一致することで、振動が大きくなり遮音性能が著しく低下する現象が生じます。この現象をコインシデンス効果と呼びます。ガラスでコインシデンス効果が発生する最低周波数(限界周波数)をグラフにすると以下になります。 ※2  各厚みのガラスはこの周波数より高い音では適当な角度で必ずコインシデンス効果が生じ、質量則の計算結果より遮音性能が低下します。コインシデンス限界周波数はガラスの厚みによって変わる(厚くなるほど低くなる)ので、遮音目的で厚いガラスに変更しても、遮蔽したい騒音が変更したガラスのコインシデンス限界周波数付近の音だった場合、薄いガラスの方が遮音性能が高かった、ということも起こりえます。

コインシデンス限界周波数はガラスの厚みが厚い程低くなります


・遮音性能について

サッシの遮音等級にはT-1からT-4等級の4つがあります

窓の遮音性能を示す指標としては「JIS A4746 サッシ」の規格 ※3 にT-1等級からT-4等級の4つ性能等級がありT-1で約25dB、T-4で約40dBの遮音性能が要求され、概ね5dBごとの区分になっています。しかし遮音性能がT-2と表示のある商品でも低音から高音まで全周波数域で[-30db]の遮音効果がある訳ではなく、評価されるのは125~4000Hzの範囲ですし、500Hz以下の周波数では要求性能が低下します。これは人間の聴覚や質量則に従い現実的な厚みを考慮 ※4 して作成された性能基準な為ですが、騒音状況や個人差によっては希望と異なる場合もあります。等級が優れているほど遮音性能が高いことには変わりありませんが、失敗しないためには等級だけでなく、騒音の原因や製品の音響透過損失値を確認して納得出来るものを選択する必要があります。




※ 1 質量則は垂直に音が入射した場合の透過損失を求める式を基本に、垂直から水平までの値の平均値を求める乱入射の式、より現実に近い値となる垂直から78°の範囲を計算して近似した音場入射の式があり、一般的には乱入射もしくは音場入射の値が実測値との比較に用いられます。
直入射(壁に対して音波が垂直に入射した場合) :TL0 ≒ 20log(f×M)-43
乱入射(壁に対して入射角0~90°の範囲の平均) :TLr ≒ TL0-10log(0.23×TL0)
音場入射(壁に対して入射角0~90°の範囲の平均) :TLf ≒ TL0-5
f:周波数(Hz)、M:面密度(kg/㎡)=2.5(ガラスの比重)×厚み(mm)
※ 2 コインシデンス限界周波数は
  fc ≒ C2(空気中の音速)÷(1.8×h(厚み)×Cs(固体中の音速))
の式で求められ、空気中の音速をC=340m/s、ガラス中の音速をCs=5300m/sとすると
  fcg≒12000÷h(ガラス厚み(mm))
の式でガラスのコインシデンス限界周波数が計算出来ます。
※ 3 125Hzの音に対して25dBの遮音性能を得られるガラス厚を質量則から求めると約23mmになります。
※ 4 JISで規定される遮音等級は本来ガラスとサッシを組み合わせた状態で測定するものです。本HP内の数値はガラス単体の値で、ガラスを比較する為の参考値です。

参考文献
「建築音響」 前川純一 発行:共立出版株式会社
「板ガラスの遮音性能(2011年版)」発行:板硝子協会