ガラスで未来を創造する。

中島硝子工業株式会社

環境変化による複層ガラスの変形

 複層ガラスは内部に空気を密閉してある構造上、製造環境と使用環境が異なると内部の空気が膨張・収縮しガラスに撓みが生じます。今回はこれら環境変化による変形について説明いたします。


温度変化による撓み

 複層ガラスを構成するガラスやスペーサーといった固体と比較して空気(気体)は温度変化に伴う体積変化が非常に大きく、温度が高くなると膨張、低くなると収縮します。複層ガラスは内部に空気を密閉した構造のため、内部の空気が体積変化するとガラスに撓みが生じます。これにより製造時より温度が高くなると内部の空気が膨張しガラスが外側に撓み、製造時より温度が低くなると空気が収縮しガラスが内側に撓みます。

温度標準状態

製造時と同じ気温


 製造時と同じ気温なら複層ガラス内部の空気は密閉時と同じ体積なので複層ガラスの膨張・収縮がない標準状態となります。

高温による膨張

製造時より高温


 製造時より気温(=密閉された空気の温度)が高くなると複層ガラス内に密閉された空気の体積が膨張し、複層ガラスが膨らんだ状態になります。

低温による収縮

製造時より低温


 製造時より気温が低くなると複層ガラス内に密閉された空気の体積は収縮、複層ガラスが凹んだ状態になります。


高度(気圧変化)による撓み

 気温変化以外にも複層ガラス周囲の気圧が製造時の気圧と変化すると内外の圧力のバランスにより複層ガラスが変形します。複層ガラスの内部空気はほぼ1気圧で密封されており、これを気圧の低い高地にもっていくと膨張、気圧の高い地下等にもっていくと収縮します。

圧力標準状態

平地(製造時に近い高度)


 平野や小高い丘程度の一般的な地域では密封された内部空気の圧力と複層ガラス周囲の気圧のバランスがとれて膨張・収縮のない標準状態になります。

高所での膨張

高地(高度500mを越えるような場所)


 高地では複層ガラス内部に密閉された空気の圧力より周囲の気圧が低いため、内部の空気層が膨張し複層ガラスが膨らみます。

地下での収縮

地下(数百m)もしくは水中


 地下や水中では複層ガラス内部の圧力より周囲の気圧(圧力)が高いため複層ガラスの空気層が圧縮され複層ガラスは凹んだ状態になります。

 このように複層ガラスは内部に空気を密閉した構造上、製造時と大きく異なる環境では変形を生じ、ガラスが破損する恐れもあります。空気層を密閉しない構造であれば、空気が出入りすることで変形を防止できますが、断熱性能が低下すると同時に内部空気の乾燥状態を保つことが出来ず、複層ガラス内部に結露を生じる状態となってしまいます。この為、複層ガラスを高地に設置する場合や空輸や高所を通るような輸送が必要となる場合には十分に検討を行うと共に場合によって特別な対応が必要となります。こういった状況が想定される場合、あらかじめご相談下さい。