ガラスで未来を創造する。

中島硝子工業株式会社

ガラスと水

ガラス(ソーダライムガラス)は窓以外にも食器や保存容器に使われ、強度が高く化学的に安定しているイメージですが、最も身近な液体である水に溶けます。ただし溶けるといっても、ガラスの主成分であるシリカ(SiO2)自体は水に溶けないので、見る間に形が変わるようなことはもちろんありません。しかし水とガラスが接している面からは極微量なガラスの成分(Na:ナトリウムイオン)が水に溶け出しています。この成分は食品にも含まれているありふれたもので、量的にも成分的にも人体には影響ありませんし、建物の窓ガラスやガラスの食器や保存容器も大半は目に見えて影響が出ることはありません。しかしガラスの表面では水滴の付着から乾燥までに概ね下図のような現象が起きており、高湿度環境になる風呂場の鏡や雨水が掛っても放置されやすい自動車のリヤウィンドウなどでは長期間に渡り何度もこの浸食が繰り返されることで、洗っても落ちない白く濁った「白やけ」や反射光が虹色にみえる「青やけ」の状態になります。


水滴の付着と乾燥を繰り返すことでガラスの表面は劣化します

水分付着によるガラス表面の浸食現象


•「ガラスのやけ」の清掃

ガラスのやけは洗浄だけでは落ちず、綺麗にするには研磨が必要になります

高湿度環境に保管したガラスの洗浄結果(黒い斑点は反射した天井の模様です)


上の写真は温度80℃湿度85%に設定した装置内に2週間投入したガラスを3つの範囲にわけ、取り出したまま何もしない領域、ガラス洗剤で拭き掃除を行った領域、研磨剤で研磨した領域を作って比較した写真で、白やけが写りやすいように黒い紙の上にガラスを置いて撮影しています。

取り出したままの領域はまるで白い塗料でも垂らしたかのように汚れていますが、高湿度環境に置かれていただけで装置投入前は綺麗なガラスでした。次に真ん中のガラス洗剤と布で拭き掃除を行った領域は、表面に付着していた塩(エン、化学反応による生成物で調味料のシオではありません)が無くなりある程度綺麗になっていますが、ガラスのやけは落とすことが出来ず、白く残っています。最後に左端の研磨処理を行った領域は変質したガラス表面を磨き落としたことで綺麗な状態になっています。

洗剤の残りかすや水垢などによる白やけ風の汚れや油分の付着等による青やけ風の汚れであれば念入りに清掃することで落とすことができますが「ガラスのやけ」はガラス自体も変質している為、変質したガラスの表面を除去する必要があります。*


•「ガラスのやけ」の予防

ガラスのやけは水分に起因して発生するので、ガラス表面に水分を付着させない、又は付着したらすぐ拭き取り、Naの溶け出しを最小限に減らすか、常に多量の水と接した状態にすれば改善できますが、用途や設置環境によるので現実的ではありません。コーティング等でも改善できますがコーティング自体のメンテナンスが必要になり万全というわけではありません。化学実験ではガラスから溶け出す成分が実験の邪魔になる恐れや、加熱、発熱に対する耐熱性が求められるため、ホウ珪酸ガラスや石英ガラスといった窓用ガラス(ソーダライムガラス)とは成分の異なるガラス容器を使用します。こういったガラスを窓にすればやけも改善出来ますがとても高価になってしまいます。環境によってはガラスも風化するということを理解した上で無理のない範囲でなるべく清掃を行い、付着した塩を洗い流すことをお勧めします。


*ガラスの研磨は正しい知識と適切な道具を用いて行う必要があり、適切に行わない場合ガラスにキズや歪みが生じる原因となります


参考文献
ガラス表面の物理化学 土橋正二著 講談社